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医薬品開発における資料作成の効率化技術 国内外の最先端企業をピックアップ!

医薬品の開発過程では、膨大なデータをもとにさまざまな資料を作成する必要がある。この資料作成は非常に手間のかかる作業で、医薬品開発の期間を増大させる一因だった。資料のフォーマット確認やバージョン管理、レビュー状況の把握、保管方法の検討などに頭を悩ませた経験のある方も、多いのではないだろうか。今回の記事は、これらの技術開発に取り組む国内外の最先端企業をピックアップする。

医薬品開発における資料作成の効率化技術 国内外の最先端企業をピックアップ!

資料作成を効率化するさまざまな最新技術を紹介した記事はこちら

海外の注目企業

①Veeva Systems(本社・アメリカ)

Veeva Systemsは、ライフサイエンス企業向けにクラウドベースのビジネスソリューションを提供する企業だ。グローバル・ファーマからバイオベンチャーまで、世界中の400社以上の企業が同社のシステムを利用している。

同社が提供する「Vault QualityDocs」は、良質なユーザビリティと社内外のシームレスな連携を実現したGxP文書管理アプリケーションだ。直観的に操作できる優れたユーザインターフェースを備えている点、文書の作成プロセスや更新状況を可視化して文書を効率的に管理できる点、監査や査察にも対応可能な点などがメリットとして挙げられている。リアルタイムでの共同編集や品質管理ワークフローのカスタマイズ、電子署名を利用した文書の承認なども可能だ。

(図の参照元:https://www.veeva.com/products/vault-qualitydocs/)

②Navitas Life Sciences(本社・アメリカ、イギリス)

Navitas Life Sciencesは、臨床、薬事、安全性に関するサービスやソリューションを提供するグローバル企業だ。同社は「pharmaREADY」とよばれるWebベースの統合ソリューションを提供している。pharmaREADYに含まれる文書管理システムが、「pharmaREADY DMS」だ。pharmaREADY DMSを使用すれば、各種国際規格を遵守した文書を効率的に作成できる。

pharmaREADY DMSには、文書の作成から編集、レビュー、コメントまでの一連の工程を管理するワークフロー管理機能や、文書のレビュー権限を設定する機能、電子署名の設定機能、各ユーザのアクセスを制御する機能など、多様な機能が搭載されている。さまざまな規模の企業に対応した、幅広いライセンスモデルが提供されている点も魅力だ。

(※図の参照元:https://www.aimprosoft.com/blog/document-management-system-for-the-pharmaceutical-industry/)

③MasterControl(本社・アメリカ、イギリス、オーストラリア)

MasterControlは、品質マネジメント業務の電子化を支援するさまざまなソリューションを提供する企業だ。同社のソリューションは、世界中の1000以上の企業で採用されている。
同社が提供する文書管理システムには、PDFファイルを自動で作成する機能、文書のバージョンやステータスを管理するライフサイクル管理機能、業界屈指のセキュリティを謳うクラウド機能、文書に対するユーザの操作を記録する監査機能など、さまざまな機能が備わっている。NDA、BLA、eCTD、INDといった複数のFDA申請用テンプレートが用意されている点も特徴だ。

(※図の参照元:https://www.mastercontrol.co.jp/products/mc_docs/)

国内の注目企業

①NTTデータ

デジタル技術を活用した各種サービスを展開するNTTデータ。同社は、治験の計画から申請データの作成・収集までをワンストップでサポートする治験トータルソリューションプラットフォーム「PharmbieLINQ(ファンビーリンク)」を販売している。
PhambieLINQには、治験関連文書の作成を効率化する「Study Domino Designer」、臨床データの収集支援・構造化を行う「Interactive Data Entry Navigation」、臨床データの変換・転送を行う「Clinical Data Transfer」の3つのソリューションが組み込まれている。このうち、文書作成を担当するStudy Domino Designer(SDD)は、標準化ドキュメントテンプレートの提供、プロトコル情報をベースとした派生ドキュメント(統計解析計画書、CSR、ICFなど)の連鎖的な生成、オンラインでの共同編集作業、過去のデータを元にしたAIによる入力サジェスト、といった機能を持つ。SDDは現在も開発途中で、2022年2月時点では上記機能の一部のみが提供されている

(※図の参照元:https://phambielinq.com/?_fsi=pHzVxgEn&_fsi=pHzVxgEn&_fsi=pHzVxgEn)

②日本ユニシス(※2022年4月、社名をBIPROGYへ変更予定)

日本ユニシスは、幅広い分野の顧客に対してさまざまなICTサービスを提供するシステムインテグレータだ。同社は、医薬品の申請書作成業務と承認情報の履歴管理業務を支援するクラウドサービスプラットフォーム「OpenTrusty」を提供している。

OpenTrustyの申請書作成支援サービスを使用すれば、2つの申請書の差分比較、薬事申請手続きに基づいた横断的な整合チェック、工程連番の自動付与や各種マスター情報(製造所情報や原薬情報)の管理などが可能だ。画面レイアウトが分かりやすく、情報の階層構造が容易に理解できる点も魅力だろう。

(※図の参照元https://www.unisys.co.jp/solution/lob/pharma/opentrusty/index.html#1)

③アガサ

アガサは、医療機関や製薬会社向けのクラウド型文書管理システム「Agatha」を展開する企業だ。Agathaを利用すれば、治験・臨床研究関連の文書をクラウド上で一元的に共有・保存・管理できる。

Agathaには、ワークスペースやワークフローの管理、PDF変換、バージョン管理、アクセス権管理などの基本機能が搭載されたベーシック版のほか、eTMFやIRB/CRB、SOP、eCTD作成に特化した製品なども存在する。これらを任意に組み合わせれば、自社に必要な機能のみを組み込むことが可能だ。

(※図の参照元:https://www.agathalife.com/products/app/)

まとめ

スタートアップから大企業まで、さまざまな企業が医薬品開発における資料作成の効率化に取り組んでいる。ITやAIを活用した効率化の流れは、今後さらに進むとみられている。本メディアでは引き続き、本分野の動向や各企業の取り組みを追っていく。

ライター:太田真琴